トップページ
コンテンツ
イメージ

特別寄稿

 花屋を営んで永くなりますが、最近感じたことを、率直に書いてみたいと思います。
 年配の女性の方であれば、結婚前にお茶やお花を習い、荷物にならない御嫁入り道具として嫁いでいった経験の方が多いのではないでしょうか?でも、さすがに最近では、その様な風習はなくなってしまいました。結婚しない人が増えたこともございますし、習い事が多様化したこともあります。
 私たちの様に、お花という商品を提供する仕事に携わっていますと、その変化をストレートに感じることがあります。例えば、お花の先生に届けていた稽古花は、その数が年々減っていき、最近では老人ホームで時々やっているお花の教室に持っていく数の方が増えている!といったところでしょうか。
 あるいは、こんなこともあります。ちょうど、この原稿が読まれるのが1月〜2月ごろなので、実感がわきやすいと思いますが、ほとんどの自動車に、しめ縄がついていない!という現象です。ここ数年で本当に変わりました。しめ縄をしていない、というだけでなく、お正月の風習そのものが、ガラッと変わってしまったのです。例えば、おせち料理ですが、これは本来、家庭の主婦が、せめてお正月くらいは、家事から開放される為に、日持ちのいい料理を年末に作っておく!という知恵から生まれたものだと、何かのうんちく本で知ったことがございます。しかし、おせち料理を作るまでもなく、正月からコンビニが開いていて、特に困ることがなくなってしまいました。そのコンビニに右ならえで、スーパーや百貨店までが、早くからオープンしています。おかげで、私がつけたタイトルの様に、1月1日が普通の日になってしまったわけです。その結果、お正月に松を活けたり、しめ縄を飾ったり、という風習が、本当に少なくなってきました。もちろん、それらのことは、私たちのビジネスにも影響がございます。
 少し、話しがそれますが、一時期コンビニの営業時間を制限する様な動きがありました。ドイツでは早くから制限しており、無駄なエネルギーを使わない工夫がなされているそうです。私は個人的に、その様な意見に賛成ですが、それはともかくとして、あまりにも便利になり(コンビニエンスconvenience=便利という意味です)お客様の感覚が変わってしまいました。以前、こんなことがございました。夜の10時ごろE-MAILで注文が入り「翌日の午前10時に、花束でオレンジ色のバラを50本○○へ届けて欲しい」という内容でした。ごく普通にこの商売をされている方なら、かなり難しいご注文だと察しがつくと思いますが、お客様からみた場合、それで当たり前ということなのでしょうね。
 ということで、コンビニ(感覚)が、時代を変えた!と言っても過言ではございません。その便利さの恩恵を私たちも受けているわけですが、こういったことが、1月1日を普通の日にしてしまった要因の1つだと言えるのではないでしょうか?
「神仏という視点から」
 1月1日は、神仏という視点から見ると、神事にあたるわけですが、先に書いたとおり、風習がかなり変わってきたと言えます。しかし、仏事に関しては、さすがにその存在意義は継承されている!と感じますね。お彼岸やお盆、法要などがそれに当たるわけですが、神事は神様にお願いごとをする、仏事はご先祖様に感謝をするという、大きなちがいがあります。神仏併用、これがこの国の文化と言えますが、やはり意義の違いは理解しておきたいものです。と言うより、この商売をしていると、おのずと、それを感じることがあります。神と仏では、商品が違いますし用途も違います。
 ただ、それらが微妙に重なっているのが、お正月です。神様にお願いごとをした、ついでに、お墓参りに行く…といった具合です。迎春用の仏花には松を入れますが、これも神仏が重なった1つと言えます。
 1月1日が普通の日と変わらなくなってきた、とは言え、やはり心新たに新しい年を迎える、そういった気分にさせることが多々あるわけです。仏事(お墓まいり)を同じ時期に行うことによって、より一層それを強くしている様に思います。小さい(子供の)時には、よくわからなかったけれど、親族の誰かが亡くなり、あの世へおくるという経験をすると、その大切さが身にしみてわかる様になります。そういった気持ちが、ご先祖様に手を合わす行為になるわけですが、その風習だけは、なくなることはないと言えます。
 1月1日が普通の日になってしまったことを書きましたが、要は私たちのビジネスは、「小売&サービス業=変化対応業」であると言えます。今、私たちをとりまく環境は本当に大きく変化しています。そういった変化の一部を紹介させてもらったわけですが、当然これらのことに敏感に対応していく必要があると言えます。 具体的対応についての話しは紙面の関係で割愛しますが、機会があれば、また、書いてみたいと思います。